妻のサイズ3
妻は着物が好きだと言ったのは結婚して6年目ぐらいだった。
呉服商の叔父の家で暫くお世話になった僕は多少の知識はある。 ウールの反物と背伏(せぶせ=背中の縫い目を補強する)を買ってきて妻に渡した。 僕「自分で縫えるかな ? 」 妻『うん、やってみるわ』 その晩、みっちゃんは本と反物とにらめっこしてた。 僕「どうや、できそうかな?」 妻『柄合わせが解らへんねん』 僕「はいよ、貸してみ、ここを合わせてな、背中の柄を合わせるんねん」 妻『ふ〜ん、後は自分でするわ』 それから数日、妻は出来た着物を羽織ってた、帯の仕立ては無理だから昔のよしみで お願いしてあったのが出来上がって車に入っている。 みっちゃんは本を見ながら着付けをした、素敵だった。 出来上がったその日、反物を渡した。(間を空けると忘れるからね みっちゃん) 仕事が少し順調になった時、みっちゃんは倒れた。 町の開業医に風邪で診てもらってたが腎臓のことが解らなかったらしい。 大学病院へ連れて行ったら叱られた、何故こんなになるまでほおっておいたんかと。 その場で入院した、みっちゃんは僕にごめんねと言った。 それから中学生の娘と小学生の息子に朝ご飯と弁当を作り、仕事に出掛けて、 買い物を娘に頼んでおいて帰ってから夕食を作ったが、それらは結構楽しい。 ただ、掃除と洗濯物を畳むと12時近くになる、朝6時に起きるのは少し辛かったが みっちゃんはそれを全部こなしてたんだよね。 間もなく小学生の息子の卒業式。 叔父に頼んであった、卒業式用の着物と羽織に帯など一式を持って病院へ行った。 僕「みっちゃん、これが息子の卒業式に着て行く着物やで、やっと出来てきてん」 妻『これって誂えとちゃうん? 高かったやろ』 それまでに、歩けるか車椅子ででも連れて行ってやりたいと思ったが間に合わなかった。 その着物は娘の卒業式と高校の入学式に着れたことが嬉しそうだった。 みっちゃんは明るくなりました、結婚した頃の寂し気な表情はなくなりました。 子供とはしゃぐ、みっちゃんを見れるのは嬉しいものです、仕事で悩んでいても、その声 と笑顔で救われます。 声に出して慰めや応援をしなくとも、笑顔と華やぐ声で元気になれるものなんですね。
by kattyan60
| 2004-12-04 00:08
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