妻の遺品
僕の部屋に妻の匂いがするものと云えば、仏壇に飾った写真と遺骨の入った箱、そして遺髪ぐらいだろうか。
過去を断ち切れないのは悲しい男の性だと判ってはいるのだが。 昨日から探し物をして、新たな遺品を見つけた。 結婚した時、妻は18歳でそれまであまり本を読まなかったと言う。 当時の僕の知識はもっぱら本に頼っていたこともあり、妻に新聞と本を読む事を薦めた。 薄くて読み易さから[リーダーズ・ダイジェスト]を妻のために届けてもらっていた。 世のお母さん達より若い年齢で子育てが済んだ彼女は、文庫本を大量に読んでいた。 娘がお母さんの本は欲しいと云ったので、総てを送ったつもりだったが、数冊が何処かに紛れ込んでいた。 その中の1冊、平岩弓枝さんの[女たちの家・上]をパラパラとめくると、未亡人となった 主人公の素敵さは、忘れられようとする日本の慎ましくも毅然とした女性の姿を見、妻と重なっているせいなのか、一気に読んでいる。 僕は妻が先に逝ったことで善しとすることにした。 独り暮らしの寂しさを乗り越えるのは、僕の方が向いているだろう。 妻が残ると、子供達は競って連れ帰るだろう、そうなれば嫁や婿、伴侶に異常に遠慮する質だから妻が可哀相だ。 僕なら子供達も適当にあしらってくれるだろう、事実そうなっている。 妻の生きた51年は決して長くはないのが口惜しいが、老いさらばえ介護される事を嫌った妻の本望だろうと考えるようにしている。 鰥寡孤独 (かんかこどく) 意味 妻を失った男、夫を失った女、孤児、老いて子のない者など、この世に頼りのない人をいう。 鰥も寡も今は普通[やもめ]というが、古くは[やもめ]は女のほうで、男は[やまお]と云ったそうだ。 素朴な疑問なれど、夫に先立たれた妻を呼ぶ名は多い。 未亡人、かん婦、後家 男の場合の呼称は何だろう。
by kattyan60
| 2005-07-10 14:47
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